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第 27 話 法隆寺 中門の中柱
コロナが落ち着き、紅葉の秋になりました。観光の季節です。なかんずく奈良、法隆寺に惹かれて、多くの観光客があの五重塔を見上げていることでしょう。
筆者も何度もその一人でした。惹かれた理由の始めは「世界最古の木造建築が、何故あの様に最高に美しいフォルムなのか?」という謎でした。木造ながら1400年に耐えた謎、あの美しくも危うげなフォルムが何度もの地震に耐えた謎。
だから、法隆寺宮大工棟梁の西岡常一氏の著「木に学べ」「口伝の重み」などを読み、氏の東寺での講演会に参加するなど、謎への挑戦に参加してきました。
法隆寺 五重塔と中門 筆者撮影
● 中門の中柱
そんな筆者は当然、梅原猛著「隠された十字架 法隆寺論」(1972年)も読みました。
その要旨は「普通の寺門は門中心を通れるのに、法隆寺中門(ちゅうもん)は真ん中に柱があり、参拝客はそれを避けて両脇を通らなければならない。これは、聖徳太子の一族が蘇我氏に滅ぼされた恨み・怨霊を封じる為だ」という推論を、多くの傍証を挙げて論じたものです。「怨霊が寺から出るのを封じる柱だ」という解釈です。
この推論は確定論拠が無く(伝承・口伝も)、さりとて当時は反論の確定論拠も無いまま、現在でも有名推論です。
● 筆者の推論解釈
その著作から30年も経ち、五重塔創建年次が確定したり(594年、心柱年輪年代法、2001年)、三大王並立実証(第23話)など、様々な整合性の高い解釈が出されてきました。その結果、「法隆寺創建(600年頃)は聖徳太子の薨去(622年)より前、一族の滅亡(643年)よりはるか前」とほぼ確定して、実は梅原説(怨霊封鎖の為の中柱)は今や成り立たないのです(建立が先)。
そこで、ここでは筆者の新たな推論解釈を提案します。
「この中門の中柱は『二王権の参拝者』が、入る時は別々でも、中では同じ仏教を共に崇めよう、という呼びかけだ」という解釈です。説明します、、、。
(1) 法隆寺は上宮大王が仏教興隆の為に建立しました(600年頃、心柱594年から)。 詳論は筆者別サイト https://wakoku701.jp/S6.html
(2) その頃、推古天皇も上宮大王と共同誓願寺元興寺を建てています(推古紀607年)。二人の大王が共同誓願寺を建てるからには、(1) の法隆寺も二王権・二大王・二王族が参拝することが前提、と想定されます。なぜなら、創建当時の法隆寺は仏教興隆寺の目的であって、後世のように上宮王・聖徳太子の菩提寺(623年〜)には未だ変えられていなかったからです。
詳論は筆者別サイト https://wakoku701.jp/S6.html/#N1
(3) 二大王は平等、どちらが上か(入門順序など)の二王家間の混乱・争いを避ける為に二門を別けて入り、入ったら一体に融合して参拝する、という形を表した、と考えます。
(4) 上宮王は倭国から独立する前、蘇我稲目の導入した百済仏教(北朝仏教)に傾倒し、反仏教の物部守屋を蘇我馬子(稲目の子)・推古らと組んで倒しました(聖徳太子(上宮王太子)・竹田皇子(推古継嗣)が参戦)。二王統は仏教興隆では同志なのです。
(5) のちに、二王権は融合・合体します。具体的には、舒明(敏達曽孫、大和王権系)と皇極(舒明皇后、上宮大王孫宝皇女)の子(天智・天武、二王権の血を引く)が大和王権天皇を継承することによって、上宮王の夢(二王権の融合・合体)は実質的に実現しました。
以上から、法隆寺に込めた上宮大王の気持ちは「二王権は対等だからどちらが先でなく、門柱の左右から入るが、中では共に融合して仏教を興隆しよう」、それを象徴する「中門の中柱」ではないか、と提案するしだいです。現代風に言えば「二人三脚の門」なのです。
● 補足
ちなみに、梅原説は同様の寺社門の中柱の例として四天王寺・出雲大社を挙げ、いずれも敗者の面がある、だからやはり「怨霊封じの中柱」だと傍証している。
これに反論するならば、
「四天王寺」は法隆寺と同じく二王権の協力の象徴です。なぜなら、この寺は物部守屋(仏教反対者)の討伐で聖徳太子(上宮王継嗣)が戦勝祈願で建立を誓った寺です。この時の戦友竹田皇子は推古の継嗣でしたから。
出雲大社は寺門でなく、むしろ怨念封じに似つかわしい社(やしろ)です。しかし、こちらも二王権の仲直りでできた門、「立派な社を造ってくれるなら国譲りしよう」とスサノヲ系大国主神の妥協案でアマテラス系が提供した社です。二王権の仲直りの象徴です。
時系列的に言えば、むしろこちらを参考にして上宮大王は「中柱」の法隆寺を造ったのかもしれません。
第 27 話 了
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